ベルリンを観光で訪れた際、「ベルリンの壁」にまつわるスポットを見学したいという方は多いと思います。
一方で、ベルリンには壁に関する観光施設がたくさんあるので、限られた時間でどこを見学すれば良いか迷う場合もあると思います。私たちもそうでした。
そこでこの記事では、2024年10月に私たちが実際に現地を訪れて「これだけは抑えるべき」と感じた2大必見スポット「チェックポイント・チャーリー(検問所)」と「イーストサイドギャラリー(壁に描かれた絵画)」の見どころを紹介します。
また、上記2カ所に隣接する「チェックポイント・チャーリー博物館」と「壁の博物館」も見学したので、主な展示内容をお伝えします。
所要時間は、博物館を訪れない場合で移動時間を含めて約3時間弱、博物館も見学する場合は4~5時間を見積もっておけば充分です。
チェックポイント・チャーリー(検問所)
基本情報
チェックポイント・チャーリー(Checkpoint Charlie)は、冷戦時代に東西ベルリンの境界に設置されていた検問所です。
具体的にはアメリカ統治地区とソ連統治地区の境界にあり、主に西側の軍事関係者や外国人が徒歩・自転車で東西ベルリンを行き来する際の検問所として機能していました。ベルリンの壁が建設された1961年から、壁崩壊後の1990年まで約30年にわたり設置され、東西ベルリンを分かつ象徴の一つとされています。
東西ドイツ統一後、2000年には検問所の小屋と関連する標識が復元され、ベルリン有数の観光地として多くの訪問客を集めています。
- 施設名称:チェックポイント・チャーリー(Checkpoint Charlie)
- 住所:Friedrichstraße 43-45, 10117 Berlin
- 開館時間: 24時間(公道上にあるため)
- 入場料: 無料(公道上にあるため)
行き方
チェックポイント・チャーリーは、Friedrichstraße(フリードリヒ通り)とZimmerstraße(ツィンマー通り)の交差点近くにあります。
地下鉄で行く場合はUバーン・U6線のKochstr/Checkpoint Charlie駅から徒歩2~3分、またはU2線のStadtmitte駅から徒歩約7分です。
バスで行く場合は、M29番に乗ってKochstr/Checkpoint Charlieの停留所で下車してすぐです。
見どころ
チェックポイント・チャーリーはベルリンでも屈指の観光スポットだけあり、いつも大勢の観光客で賑わっています。
上の写真は旧アメリカ地区側から撮影したもので、検問所の上には”US ARMY CHECKPOINT”と”ALLIED CHECKPOINT”の文字があり、その上には若いソ連兵の写真が掲げられています。「この先はソ連のエリアだぞ!」と分かりやすく注意しているようにも見えます。
検問所の右側には、”You are leaving the American Sector”(ここでアメリカ地区は終わり)と書かれた標識があります。同じ意味でロシア語、フランス語、ドイツ語でも表記されています。
検問所の小屋の中には入れませんが、外から写真を撮ることはできます。こんな感じの粗末な小屋で、サイズ感としては日本の高速道路の料金所のようなイメージです。
反対側の旧ソ連地区側に来てみました。こちらには、若いアメリカ兵の写真が掲げられています。
旧ソ連地区から見える標識には「ここからアメリカ地区」という意味の表示がありますが、それに加えて「非番時の武器携帯禁止」と「交通ルールに従え」という意味の注意書きもあります。
アメリカ地区→ソ連地区に行く時よりも、ソ連地区→アメリカ地区に入る時の方が注意書きが厳しいというのが、なるほどと思いますね。
ちなみに検問所の小屋の前は、このように写真撮影スポットになっています。私たちが行った時は何十人も並んでました。
チェックポイント・チャーリー博物館
基本情報
チェックポイント・チャーリーのすぐ脇には、東ベルリンから西ベルリンへ脱出を試みた人々に焦点を当てた「チェックポイント・チャーリー博物館(Museum Haus am Checkpoint Charlie)」があります。
なお、旅行ガイドブックでは「壁博物館」と呼んでいる場合もありますが、この記事では「チェックポイント・チャーリー博物館」と表記します。
- 施設名称:チェックポイント・チャーリー博物館(Museum Haus am Checkpoint Charlie)
- 住所:Friedrichstraße 43-45, 10969 Berlin
- 公式HP:https://www.mauermuseum.de/
- 開館時間: 10:00~20:00(年中無休)
- 入場料(2024年10月時点)
- 大人18.5€、7歳~18歳の学生9.5€、6歳以下無料。現地でのチケット購入はクレジットカードのみ。
- ベルリン・ウェルカムカードがあれば25%引きの料金で入場可。
写真撮影は有料
チェックポイント・チャーリー博物館は、地上階~2階までの3フロアに渡って延べ2,000㎡の展示スペースがあります。
普通の博物館と異なるのは、館内で写真撮影をするには”Photo Permission”を5€で購入する必要があるという点です。通常の入館料が大人18.5€とすでに高いのに、さらに5€も追加で支払うのはちょっとやり過ぎな感じもしましたが、私はブログ記事のために人柱として購入しました。
ちなみにPhoto Permissionを購入すると、このような目印を腕に巻いてくれます。
これで正々堂々と館内で写真撮影が出来るのですが、実際にはPermissionを購入しないで撮影している人も結構いました。そしてそれをチェックしているスタッフもおらず、何だかなぁという気持ちになりました…。
見どころ
気を取り直して、チェックポイント・チャーリー博物館の展示内容を紹介していきます。
はじめにお伝えしたいのが、この博物館の展示は文字による説明が中心(西側に脱出成功・失敗した人たちのストーリー)で、一般的な博物館のような「展示物」は少ないです。また、説明はドイツ語とその英語翻訳のみです。さらに言うと、英語翻訳もドイツ語を機械的に直訳したような感じで意味不明なものが結構あります。
以下、「展示物」として比較的分かりやすいものを紹介していきます。
入口を入ってすぐに現れるのは、西ベルリンで「逃がし屋」として活動していた人が使用していた車、フォルクスワーゲン・ビートル1200です。
この車に脱出希望者を乗せて、あの手この手で1964年から1966年までに計55名を西側に脱出させたようです。
ベルリンの壁の地下には複数の脱出トンネルが掘られ、東側から西側に脱出するルートとして使われました。以下の写真は、1961年から62年にかけて造られた長さ30mの地下トンネルを通じて、計28名が東ベルリンから西ベルリンに脱出した時のものです。
ちなみにこの時の脱走ストーリーは「Tunnel 28」というタイトルで映画化され、当時の西ドイツとアメリカでヒットしたようです。上の画像では右上の写真が映画のシーンで、左下が実際の脱走時の写真だということです。
別の地下トンネルに関する解説もありました。こちらのトンネルは西ベルリンで空き家になっていたパン屋の地下から堀りはじめ、地下12m、長さ140m以上という大規模なスケールで、東ベルリンの屋外トイレ小屋の地下まで繋げたようです。
このトンネルを通って、計57名が1964年10月に西ベルリンに脱出しました。
脱出は地下だけでなく、空からも行われました。こちらの展示は、2家族8人が脱出した時に使用した手作りの熱気球です。
この熱気球は、完全な素人が文献を参考に見よう見まねで作ったようです。東ベルリンの壁から12kmの地点で離陸し、一度は監視員のサーチライトに捕捉されたものの、高度2,000m以上に浮上して監視の目をかいくぐり、西ベルリン側に無事着陸しました。
普通に考えたら命の危険と隣り合わせなので、子どもを連れて挑戦するにはリスクが大きい方法ですが、それでも自由を求めて西側に渡りたいという思いがいかに強かったかが伝わってきます。
また、壁の境界線上に建っていた建物の窓からは、西側住民の協力を得て以下のようにターザンロープのような方法で壁を越えた人もいたようです。
スピーカーの中に身を隠して脱出した人もいました。
カルロス・ゴーンも似たような方法で日本から逃亡しましたが、こっちの方がより窮屈で大変だっただろうと思います。
なお、チェックポイント・チャーリー博物館では、脱出に成功した人だけでなく、失敗して悲惨な末路をたどった人達のストーリーも取り上げています。冷戦中に東ドイツから西ドイツに脱出しようとして、計1,000人以上が命を落としたといわれています。
ショップでは壁の破片も購入可
チェックポイント・チャーリー博物館のショップでは、ベルリンの壁にちなんだ商品が多数売られています。
中でも注目なのが、実物のベルリンの壁のかけらをオブジェにした商品です。値段は一つ15€。
ベルリンの壁やチェックポイント・チャーリーのような「負の遺産」をビジネスに変えるあたり、ドイツ人はお金儲けが上手いなぁと思いました。この博物館もかなりいい入場料を取ってますしね。
イーストサイドギャラリー
ここからは、ベルリンの壁に関するもう一つの必見スポットであるイーストサイドギャラリーについて紹介します。実際の壁が残っており、そこにアート作品が描かれています。
基本情報
イーストサイドギャラリーは、ベルリンの壁崩壊後、旧東側の壁面に直接描かれた様々な絵画の総称です。
ベルリンの壁が1989年11月に崩壊した後、分断の歴史を忘れないために西ベルリンのアーティストが呼びかけて始まった取り組みで、21カ国から118名の芸術家が参加し、1.3kmの壁面に105件の絵画が描かれました。
その後壁画は劣化が進んだため2009年から修復作業が行われ、現在の壁画は修復後のものです。
- 施設名称:イーストサイドギャラリー(East Side Gallery)
- 住所:Mühlenstraße, 10243 Berlin
- HP: https://www.eastsidegalleryexhibition.com/
- 開館時間: 24時間
- 入場料: 無料
行き方
イーストサイドギャラリーへは、SバーンやRE/RBの各路線が停まるターミナル駅・Berlin Ostbahnhofから徒歩2~3分、あるいはUバーン・U1線のWarschauer Straße駅から徒歩7分ほどです。
見どころ
私たちは、イーストサイドギャラリーの東の端(Warschauer Straße駅方面)から訪れました。壁はミューレン通り(Muhlenstraße)沿いにあり、このような形で始まります。
ここから、高さ3.6mの壁がアートギャラリーとして約1.3kmに渡って続いています。
ベルリンの壁というキャンバスに描かれているだけあり、基本的に政治的なメッセージが込められた作品が多いです。こちらはドイツの国旗にイスラエルの国旗を重ねた作品です。
写真ではよく見えませんが、絵の右側にドイツ語で作者のメッセージが書いてあり、基本的には世界平和と人々の連帯をテーマにした作品だということです。ただ、現在の国際情勢に鑑みると風刺画のように見える方もいるかもしれません。
こちらの作品は、旧ソ連のゴルバチョフ書記長を描いたものだと思われます。
ブランデンブルク門のような背景をバックに車を運転している様子で、握っている車のハンドルは、ソ連の国旗でシンボルとして描かれているハンマーと鎌をモチーフにしているように見えます。
ソ連の改革路線を進めた指導者として、ゴルバチョフはドイツ統一においても重要な役割を果たしたこと(統一ドイツがNATOに留まることを是認など)を表現しているのではないかと思います。
こちらの壁画はとてもカラフルで、やはり世界平和をテーマにしていると見受けられます。
イーストサイドギャラリーで一番有名なのは、やはりこちらの壁画でしょう。ソ連の書記長ブレジネフと、東ドイツの書記長ホーネッカーがキスする場面を描いたものです。
この絵は、1979年に開かれた東ドイツ建国30周年の記念式典で、実際に両者がキスを交わした場面の写真を題材として描いたものです。なお、ソ連というかロシアでは、親しい男性同士でキスをする文化があるようです。
途中で壁が途切れている場所がありました。壁を横から見るとこんな感じです。
実際には1枚の壁で全てが隔てられていたわけではなく、ほとんどの境界線で壁は2重に建設され、2枚の壁の間には数十メートルの無人地帯が設けられていました。
そして無人地帯は東ドイツの国境警備隊が厳重に監視し、脱走者がいないか24時間監視していたようです。
壁の博物館
基本情報
イーストサイドギャラリーの東の端には、ベルリンの壁にまつわる様々な展示がある「壁の博物館」があります。
- 施設名称:壁の博物館(The Wall Museum East Side Gallery)
- 住所:Mühlenstraße 78-80, 10243 Berlin
- 公式HP:https://thewallmuseum.com/en/
- 開館時間: 10:00~19:00(年中無休)
- 入場料(2024年10月時点)
- 現地購入の場合:大人12.5€、学生9.5€、7歳以下無料。
- オンライン購入:大人9.99€、学生6€、7歳以下無料。
行き方
壁の博物館は、イーストサイドギャラリーの東の端にあり、Uバーン/U1のWarschauer Straße駅から徒歩約7分です。
見どころ
壁の博物館は、小規模なビルのワンフロアだけで構成され、こじんまりとしています。全部で13の展示部屋があり、その一部を紹介します。
こちらは壁の建設作業を再現した展示です。
そもそも西ベルリンは、地理的には東ドイツの中に「飛び地」として存在していましたが、ベルリンの壁は西ベルリンをぐるりと囲む形で総延長155kmにわたり建設されました。
壁は、最初は境界線上に有刺鉄線を張る形で建設され、その後高さ3.6m以上のブロック塀やコンクリート壁に強化されていきました。
こちらの展示は特に説明がありませんでしたが、おそらく当時の東ドイツの一般的な家庭の様子を再現したものと思われます。本棚には、東ドイツの支配政党であったSED(ドイツ社会主義統一党)の冊子が置かれています。
建物のバルコニーに出ることもできました。バルコニーからは、Spree川とその向こう岸が見えます。当時はSpree川が東西ベルリンの国境になっていましたが、西ベルリン側の川辺で遊んでいた子供が溺れたものの、国境侵犯を恐れて大人は誰も助けられないという事故がたびたび起こり、1966年から1975年までに5人の子供が亡くなったようです。
こちらの映像は、1989年11月9日に開かれたドイツ社会主義統一党の記者会見で、広報官が「東ドイツ国民は今後ただちに全ての国境から国外に出ることが認められる」と発言したときのものです。
広報官が内容を良く理解しないままうっかり発言したという説もありますが、いずれにしてもこの発言がきっかけで東ベルリン市民が国境検問所に殺到し、収拾がつかなくなり、なし崩し的にベルリンの壁が崩壊することになりました。そして、東西ドイツ統一に向けて急速に事態が進んでいくことになります。
東西ドイツ政府と米英仏ソ連の6カ国間で締結された「ドイツ最終規定条約」のコピーも展示されていました。1990年9月12日に、東西ドイツと連合国間の講和条約として調印されたもので、これによりドイツ統一が確実なものなりました。
1990年10月3日に行われたドイツ統一式典の様子も展示されています。現在でも10月3日は「ドイツ統一の日」として祝日になっています。
以上で展示の紹介は終わりです。小さな博物館なので、ゆっくり見ても1時間はかからないと思います。
帰り際にトイレに寄りましたが、入口には旧東ドイツの警備兵と思われるマネキンが立っていました。監視されているようで落ち着かないです…。
まとめ
この記事では、ベルリンの壁に関する2大必見スポットである「チェックポイント・チャーリー」と「イーストサイドギャラリー」について、2024年10月時点の観光情報と見どころについてご紹介しました。
また、これらのスポットに隣接する「チェックポイント・チャーリー博物館」と「壁の博物館」についても、主な展示内容などについてお伝えしました。
正直に言って、2つの博物館は入場料が高めで展示も文字が中心なので、東西冷戦やベルリンの壁の歴史に強い関心がある人以外は、パスしても良いような気がします。特に小さいお子さんは、楽しむのが難しいと思います。
一方で、チェックポイント・チャーリーとイーストサイドギャラリーは無料ですし、この記事で紹介したとおり大変興味深いスポットなので、ベルリン観光の際にはぜひ訪れるのをおすすめします。
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